相原正明写真夜話Ⅳ

相変わらず皆さんもコロナで大変だと思います。遠出はやはり気をつけなければならないですが、やはり病は気から。 すこしは活動と思い、近所での散歩撮影から都内の散歩撮影をしています。
やはり毎日撮る、何かしら撮る。そうしないと撮影のリズムを忘れたり、視点や心の扉が錆びついてしまいます。風景が撮れないから、毎日家でネゥットサーフィーン、これではアフターコロナは撮影できないです。

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多くのアスリートは試合がなくても家でトレーニングしているし、音楽家は家で基礎曲を弾いたり、ボイストレーニングをしている。ならば写真家も同じ。さらに僕は今、メインステージのオーストラリアにも行けないので、足元の東京を撮ろうと日々歩き回り撮りまくりです。特に隅田川沿いを歩き、路地裏あるいは隅田川にかかる橋のディテールを撮っています。

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街を歩き、自然光で撮る。一番大切でいちばん好奇心のトレーニングにもなります。広告代理店時代、当時は営業マンをしていました。いつかプロの写真家を目指そうと思っていたので、かわいがっていただいていたスタジオのボスのTさんに「物撮りのライティングとか、上手になりたいです」と言ったら、そんなことやるよりも、自然光でどう撮るか?日常の中でどう切り取るか、その練習をしたほうがいい。不動産広告で撮る環境写真(物件の近くの駅や学校 店舗を撮影して、こんな素晴らしい環境に弊社の物件はあるのでお買い求めくださいと、説明する写真。)がある意味一番撮影の基礎であり一番要、そこを勉強するとよいよと、言われました。

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写真家になり、最初のころの仕事は9割環境写真。その時に、説明プラス少し環境のイメージも撮るようにしていた。それが良くB&W企画さんのワークショップでもお見せするように、街中の視点の大元になっている。
同じ町でも、朝・昼・晩で表情は変わる。また歩き方でも。同じエリアでも歩く向きで見方が変わる。なので撮影1日目 朝の街を右回りで歩いたら、2日目は昼から夕暮れの街を左回りで歩く。
そな訓練と言うか撮り方をすると、日常で見過ごしてしまうものを発見しやすい。できれば同じエリアは3回 あるいは3日は最低でも撮らないと、表面をなぞっただけとなってしまう。作品的には1回正味1週間しか滞在できないハワイより、毎日通いのべ100日撮影した、自分の地元の街の方が良い写真が撮れるかもしれない。

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遠くに行くこと 珍しいものを撮ること、それだけが素晴らしい写真ではない。昔は海外や世界の辺境は、だれもが行けたり見れなかった。それこそウルル(エアーズロック)が写っていれば、パタゴニアの氷河が写っていれば売れた時代もあった。
でもそんなものはいま、SNSですぐ見れる。そんな写真でプロであり続けるのは不可能。被写体の向こうにある、その人の哲学、人生観、心が感じられないとプロの作品とは呼べない。

 


そしてアマチュアの方も自分の存在意義を示すには、きれいなだけの写真ではだれも見てくれない。旅に行けない時代、ある意味足元を再発見するとても良い時代かもしれない


2020/09/25
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