相原正明写真夜話Ⅵ

In and out

人生でも、仕事でも、そして日常でも想定外の事態というのは起こりうる。
それは今まさに、世界を覆っている。そう、みなさんご存知のコロナウイルス禍
誰もが去年の今頃は想像もしていなかったことだ。自分のメインフィールドオーストラリアには撮影には行けない。多くの人から「オーストラリアには行けないから、相原さんはしばらく作品が作れないでしょ?」と言われたが、
答えは”No”だった。撮りに行けないことは悲しいが、作品が作れないわけではない。その訳は・・・

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2004年オーストラリアで、そして海外での初個展をしたとき、ぼくの個展をキュレーションしてくれた女性がいた。元オーストラリア・ナショナルアートギャラリーの主任学芸員パット・サビーネさん。その後も、いまもって僕の作品をいつも見ていただき、多くのアドバイスをいただいている。ある時、日本の風景の作品を見ていただいたときに「Masa、あなたが撮るオーストラリアのランドスケープは、ほかの写真家と違い、とても日本の和のテイストがある。多分それは自然と、あなたのDNAから出てくると思う。
そしてあなたが撮る日本のランドスケープは、とてもオーストラリアの香りがする。これは誰も真似ができない。多くの作家は、一つのことを突き詰めるとマンネリ化してくる、あるいは発展性がなくなってしまう。
だけど日本とオーストラリアを行き来し、常にInとOutを繰り返すことで、新しい視点で見ることが出来ると思う。日本から戻りオーストラリアで撮ると、オーストラリア人が、気づかない、ここの光と影と視点が気付き、日本に戻り撮ると、日本人が気付かない視点と光で撮る。これはとても大切。
これからも常にInとOutを繰り返すことで、常に新しい視点で撮れるはず。」とアドバイスをいただいたのが一番大きい。

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それ以外にも、風景しか撮影できなければ、日本ではどうかわからないが、世界では仕事はできない。モノクロで人物の撮影をしっかりすること、それが世界で仕事をする基本というアドバイスも以前いただいた。これも、しっかり守っている。そう、つまりオーストラリアに行けない、これはネガティブなことではなく、違う光と影と視点を経験 体験する機会なので、その体験をさらなる糧としてオーストラリアに戻れた時、新たな作品作りに生かせるはずと持っている。そして自分自身の哲学を持っていれば、自分の世界観の光と影と視点があるので、どんな被写体をどんな場所でも撮れるはず。

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実は来年1月にKatachiというタイトル&コンセプトで個展を行う。物のフォルムの美しさと、その向こうに存在する物に宿るSpiritを表現する。オーストラリアと日本で撮影した作品の対比でお見せする。オーストラリアでは大自然の中で見つけた、岩や木に宿るSpiritをオーストラリアの自然の光で、そして日本の作品は、コロナ禍で撮影に行けなくなり、家の中の4畳半のスペースで、LED照明 つまり人工光源で撮った、家の中にある身近な物、野菜や果物、花などを撮った作品。大自然の中とマイスタジオの中、自然光と人工光源などなど数々の対比で作品を作り上げた。でも撮るのは自分。常に自分なりの光と影と画角を持つことで、場所も条件もくぁっても自分なりの作品が撮れる。これも常にIn&Outで数々の条件で撮影していたからこそと思う。ネイチャーフォトグラファーだから、大自然に行けないから作品が撮れない、これでは写真家として失格。自分で視点を狭めている。これをお読みの皆さんも、普段と異なるカテゴリーを撮ることで、新たな視点を見つけられるはず。ストリートフォトやスナップを撮っている人は、腰を据えて物撮りをする。風景を撮っている人は、ポートレイトあるいは建築写真を撮るなど、異なるカテゴリーに挑戦すると必ず、新たな視点 異なるカテゴリーから影響あるいは流用できることがたくさんあることに気づくはず。この宇宙のすべての物は光と影から成り立っている。それを抑えればとれるはず。ちなみに僕の仕事の時のセールストークは「餃子からマンモスまで何でも撮ります」です 皆さんもお試しあれ

相原正明 写真展 Katachi
2021年1月13日~1月24日
開催場所 東京 表参道 ピクトリコギャラリー
全作品 モノクローム 約30点の予定
詳細は改めてお知らせします

2020/10/25
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